楯状地と卓状地の区別について

楯状地と卓状地の区別について説明して下さい。

楯状地も卓状地も,地質(岩石の種類・年代・配列)に基づく地域区分です。いずれも先カンブリア時代(地球誕生~5.4億年前)という古い時代の造山運動※1によってつくられた岩石(花崗岩・片麻岩など)を土台(=基盤岩)とした地域で,あわせて安定陸塊(または安定地塊)と呼びます。このうち楯状地とは,先カンブリア時代の基盤岩が地表に露出している一帯をさします。こうした地域は長い間の侵食作用によって平坦化され,なだらかな丘陵地・高原になっていることが多く,全体的にみると中世の騎士が使った楯を伏せたような地形のところが多いので,楯状地と名付けられました(図1)。

楯状地と卓状地図1 卓状地と楯状地

これに対して卓状地は,楯状地をつくる基盤岩の上に,水平ないし,ごく緩やかに傾いた堆積岩の地層が横たわっている地域です(図1)。安定陸塊の大部分は,古生代以後(5.4億年~現在)の造山帯に比べ長い期間,激しい地殻変動がおこらず「安定」している地域です。しかし,安定陸塊も古生代以降,緩やかに隆起したり沈降したりしたほか,気候の変化や海洋底の沈降状況によって海水面が上下するため,その一部がしばしば海底になりました。この海底に土砂がたまり,基盤岩の上に堆積岩の地層が形成されたところが卓状地です。その後,再び陸地になったところでは,堆積岩は徐々に侵食されていきますが,それでも堆積岩が残存する地域が,陸地で卓状地とされるところです。

※1 造山運動とは,陸地(大陸棚を含む)を構成する基盤岩(上部地殻)を,数千万年かけて広域にわたって成長(誕生・改変)させる作用のことで,山地の形成を直接示す用語ではありません。そうした地殻の成長に伴い,大山脈や,山がちな弧状列島が形成されるため,「造山」の語があてられていますが,地殻の成長(=造山運動)がなくても山地が形成されることはあります。なお,地球上に海が誕生したとき,大陸は存在しませんでした。その後,プレート運動の開始を経て,プレートどうしがせばまる境界で造山運動が生じるようになり,大陸が生まれ増えていったと考えられています。ただし,25億年前より以前にあった初期の大陸は,その後の造山運動とは異なる作用でできたという説もあり,大陸誕生の原因は特定されていません。

(2018.4.18更新)